ゲイリー・ホフマン

Jean-Philippe Collard, La Dolce Volta

ジャン=フィリップ・コラールの揺りかごの周りでは、音楽の精が行き来していた。フランスはシャンパーニュ地方の音楽好きな大家族で育った彼は、日常的に家族と奏でていた室内楽に、すぐさま魅了された。やがて10歳になり、故郷を離れてパリに上京したコラール。しかし当時はまだ、その後どのような人生が彼を待ち受けているのか知る由もなかった――パリ国立高等音楽院、国際コンクール、8年にわたる師ピエール・サンカンの有益な、しかし厳しい指導。そしてコラールは、世界の檜舞台へと背中を押されることになる……

コラールはしかし、学歴や庇護者の名を、自らの才能を保証するものとしてひけらかすことはしない。その芸術が成熟していく決定的な時期に育まれたホロヴィッツとの堅い友情についてでさえも、雄弁に語ることはほとんどない。大家ホロヴィッツから、深く息の長い“歌”の奥義を学んだコラールは、抑制された叙情性と、琴線に触れるあたたかく親密な演奏スタイルを備えたヴィルトゥオーゾとなった。

これまでに50以上の録音を発表してきたコラールは、カーネギー・ホール、コロン劇場、シャンゼリゼ劇場、ロイヤル・アルバート・ホールをはじめ、ヨーロッパや北米、南米の主要なホールで定期的に演奏を行っている。母国フランスの聴衆の間で高い知名度を誇り、アメリカでも人気を博しているコラールは、一流の指揮者やオーケストラと、世界各地で共演している。

それでも、こうした脚光がコラールの目を眩ませることは決してない。気取らず率直で、陽気な彼は、公の場での成功よりも、幸福な私生活について喜んで語る――妻と5人の子供たちとの充実した家庭生活、誠実な親友たち…。自然と日曜大工をこよなく愛するジェントルマン・ピアニストは、いくつもの“秘密の花園”を有しているのだ。

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